1. 税込経理と税抜経理は、何が違う?
パソコンの購入画面に「本体38万円、税込41万8,000円」と表示されているとします。
「40万円未満なら一度に経費にできると聞いたけれど、このPCは対象?」
この判断で確認したいのが、税込経理と税抜経理のどちらを採用しているかです。
税込経理では、消費税を含む金額を売上・経費・資産として記録します。税抜経理では、本体価格と消費税を分けて記録します。ここでいう消費税には、地方消費税も含みます。[出典:国税庁・税抜経理方式または税込経理方式による経理処理]
11万円の備品で見る、帳簿への記録の違い
本体10万円、消費税1万円の備品を、普通預金から支払った例です。事業で100%使用し、適格請求書を保存するなど、消費税を全額区分できる通常の取引を想定します。
経理方式 | 購入時の記録例 |
|---|---|
税込経理 | 工具器具備品11万円/普通預金11万円 |
税抜経理 | 工具器具備品10万円+仮払消費税等1万円/普通預金11万円 |
「仮払消費税等」は、仕入れや経費の支払いに含まれる消費税を、後で精算するために分けておく勘定科目です。売上に含まれる消費税は「仮受消費税等」として分けます。
どちらも銀行から出ていく金額は11万円です。違うのは、帳簿の中で消費税を分けるかどうかです。
なお、この表は購入時の記録例です。備品代をその年に経費にするか、数年に分けるかは、別途、制度の要件に沿って判断します。
関連記事:減価償却って何?パソコンの購入でわかる、経費を分ける仕組み
2. 自分はどちらを使える?免税事業者は税込経理
最初に確認するのは、消費税の納税義務
消費税を納める義務がある「課税事業者」は、原則として税込経理・税抜経理のいずれかを選べます。
一方、納税義務が免除されている「免税事業者」は、税込経理を適用します。
自分の区分 | 適用する経理方式 |
|---|---|
消費税の課税事業者 | 原則として税込経理・税抜経理から選択 |
消費税の免税事業者 | 税込経理 |
免税事業者が、PCの金額基準を下回るために税抜価格だけを使うことはできません。[出典:国税庁・税抜経理と税込経理の選択適用(個人の場合)]
青色申告かどうかとは、別の区分
「青色申告だから税抜経理」「白色申告だから税込経理」という関係ではありません。
青色申告・白色申告は所得税の申告方法の区分です。消費税の課税・免税とは分けて確認します。
また、インボイス発行事業者として登録している間は、原則として消費税の納税義務は免除されません。「売上が少ないから免税」と決めつけず、登録状況も確認しましょう。[出典:国税庁・納税義務の免除]
このPCだけ税抜、ほかは税込、と自由には選べない
選択した経理方式は、その個人が行うすべての取引に適用するのが原則です。
事業所得と不動産所得で方式を分ける場合など、一定の併用が認められる取扱いはあります。ただし、「高い備品を買ったときだけ税抜金額で判定する」という使い方ではありません。[出典:国税庁・個人事業者の経理方式の選択と併用]
3. 税込41万8,000円のPCは、一度に経費にできる?
次の条件で、40万円未満の少額減価償却資産の特例を考えます。
本体価格38万円、消費税3万8,000円、支払額41万8,000円
2026年7月に購入し、その月から仕事で100%使用
本体以外に取得価額へ加える費用はない
青色申告で、特例の対象者・年間300万円枠など、金額以外の要件を満たす
税抜経理の例は、適格請求書を保存し、仕入税額控除を全額受けられる取引を想定
税込経理:41万8,000円なので対象外
判定する取得価額は、消費税を含む41万8,000円です。40万円以上なので、この特例は使えません。
取得価額が20万円未満でもないため、一括償却資産も選べません。通常の減価償却で、数年に分けて経費にしていきます。
税抜経理:38万円なので金額要件を満たす
判定する取得価額は38万円です。40万円未満なので、ほかの要件も満たせば、38万円をその年の必要経費にできます。
消費税3万8,000円は、消費税の計算・精算で扱います。PC代の経費に、さらに上乗せするわけではありません。
同じPCでも、経理方式によって「その年に一度に経費にできるか」が変わる場合があります。[出典:国税庁・減価償却のあらまし]
関連記事:少額減価償却資産の特例は40万円未満へ――35万円で買ったパソコンはどう経費にする?
10万円・20万円の境目でも、考え方は同じ
たとえば、本体9万5,000円・税込10万4,500円の備品なら、税込経理では「10万円未満」に入りません。税抜経理では、上記と同様の前提なら10万円未満として判定します。
本体19万円・税込20万9,000円なら、税込経理では20万円未満の一括償却資産を選べず、税抜経理なら金額要件を満たします。
どの基準も「未満」です。税抜40万円・税込44万円のPCは、税抜経理でも40万円未満の特例を使えません。
4. 税込経理の方が、経費が多くなって得なの?
経費だけを見ると、消費税を含む税込経理の方が金額は大きく見えます。しかし、税込経理では売上にも消費税が含まれます。
さらに、納付する消費税の処理も異なります。
経理方式 | 納付する消費税の基本的な扱い |
|---|---|
税込経理 | 必要経費として処理する |
税抜経理 | 仮受・仮払消費税等を精算し、原則として経費にはしない |
税込経理の消費税を必要経費にする時期にはルールがあります。また、税抜経理でも簡易課税などによる差額が所得に影響する場合があります。[出典:国税庁・納付税額又は還付税額の経理処理]
税込でも税抜でも最終利益は同じになります
全取引が税率10%で、売上が税抜100万円、当年の経費が税抜40万円だったとします。一般課税で仕入税額控除を全額受けられ、税込経理では納付消費税を同じ年の必要経費に計上する前提です。
税込経理では、売上110万円から経費44万円と納付消費税6万円を引きます。
110万円 − 44万円 − 6万円 = 利益60万円
税抜経理では、売上100万円から経費40万円を引きます。
100万円 − 40万円 = 利益60万円
この例では利益は同じです。「税込だから消費税分だけ経費が増えて得」とは言えないことがわかります。
ただし、先ほどのPCのように使える償却制度が変わる場合や、消費税を経費にする年が異なる場合には、年ごとの所得に差が出ます。備品1台だけでなく、事業全体の処理として考えましょう。
5. インボイス・家事按分・償却資産申告との関係
インボイスがあれば、必ず税抜価格で判定できる?
できるとは限りません。先述のように、まず、自分が採用する経理方式が基準になります。
免税事業者がインボイスを受け取っても、税込経理で判断します。課税事業者でも、税込経理を採用していれば税込金額です。
一方、税抜経理でも、仕入税額控除は別途要件を確認する必要があります。仕入税額控除とは、売上に係る消費税から、仕入れなどに係る消費税を差し引く仕組みです。
本記事の計算例は、インボイスなどの保存要件を満たし、全額控除できる通常の取引に限っています。インボイスを発行しない相手からの購入などでは、表示された税抜価格をそのまま取得価額にできるとは限りません。購入先や適用する消費税の計算方法も確認してください。[参考:国税庁・免税事業者からの仕入れに係る税抜経理の例]
仕事と私用で使う場合は、どちらを先に考える?
先に経理方式に応じた取得価額を確認し、その金額で制度を判定します。その後、経費にする段階で仕事で使った分を分けます。
今回のPCを仕事で70%使う場合、税抜経理なら取得価額38万円で特例を判定し、適用できる場合の必要経費は26万6,000円です。
税込経理なら41万8,000円で判定するため、70%を掛ければ40万円未満になるとしても、この特例は使えません。
関連記事:仕事と私用で使うパソコン、少額減価償却資産・一括償却資産の判定は家事按分の前?後?
償却資産申告の取得価額も、経理方式に合わせる
償却資産申告では、税込経理なら消費税を含む取得価額、税抜経理なら消費税を区分した取得価額で申告します。家事按分で取得価額を減らす扱いにはなりません。[出典:豊中市・償却資産]
少額減価償却資産の特例で経費にしたPCも、原則として償却資産申告の対象です。所得税の経費処理を終えたら、こちらも確認しましょう。
関連記事:償却資産申告とは?個人事業主が確認したい対象資産・期限・免税点
6. 会計ソフトに入力する前の確認ポイント
購入金額を入力する前に、次の順番で確認すると整理しやすくなります。
自分は消費税の課税事業者か、免税事業者か。
その業務では税込経理・税抜経理のどちらを採用しているか。
請求書の本体価格・消費税・支払総額はそれぞれいくらか。
取得価額に含める付随費用や、インボイスに関する確認事項はないか。
適用できる償却制度と、仕事で使う割合はどうなるか。
税抜経理でも、会計ソフトへの入力額が必ず税抜とは限りません。税込総額を入力し、税区分によって本体と消費税を自動で分ける入力方法もあります。
「税抜経理だから」と本体価格だけを入力して、さらにソフトが消費税を差し引くと、金額がずれてしまいます。
今回の例なら、税抜経理の購入記録で備品38万円、仮払消費税等3万8,000円、支払総額41万8,000円となっているかを確認しましょう。請求書、仕訳、固定資産台帳を照らし合わせると、入力の取り違えに気づきやすくなります。






