1. 2割特例は2026年分まで、3割特例は2027・2028年分
「2割特例が終わると、消費税の負担はどうなるの?」
2026年度税制改正により、個人事業主には、その後の2年間を対象とする3割特例が設けられました。
対象となるのは、インボイス登録に伴って免税事業者から課税事業者となった方など、一定の条件を満たす個人事業者です。法人には3割特例はありません。[出典:国税庁・令和8年度税制改正特集]
通常の1月〜12月を課税期間とする個人事業主について、年ごとに整理すると次のようになります。
対象となる年分 | 利用できる特例の範囲 |
|---|---|
2026年分 | 要件を満たせば2割特例 |
2027年分 | 要件を満たせば3割特例 |
2028年分 | 要件を満たせば3割特例 |
2029年分以後 | 現行制度では2割・3割特例の対象外 |
「2026年9月30日まで」を、売上の日付と混同しない
2割特例は、2026年9月30日までの日が属する課税期間が対象範囲です。
そのため、課税期間を短縮していない個人事業主は、要件を満たせば2026年分の申告で利用できます。1〜9月を2割、10〜12月を別の方法に分ける、という扱いではありませんので注意しましょう。[出典:国税庁・2割特例の概要]
申告する年と、対象の年分も分けて考える
2027年3月に行う通常の消費税申告は「2026年分」です。2027年に提出するから3割特例になるわけではありません。
3割特例を使う2027年分の申告は、通常、2028年3月に行います。申告書を作るときは、提出する日付よりも、何年分を計算しているかを先に確認しましょう。
2. 3割特例で納付額はいくらになる?
3割特例は、売上に係る消費税額の70%を差し引くことで、納付額を売上税額の30%とする制度です。
売上税額 × 30% = 納付額の目安
売上金額の30%でも、消費税率が3%になる制度でもありません。
税込売上1,320万円なら、3割特例の目安は36万円
年間売上が本体1,200万円・消費税120万円・税込1,320万円で、すべて税率10%とします。適用要件を満たし、ほかに調整がない場合の概算は次のとおりです。
計算方法 | 納付額の目安 |
|---|---|
2割特例 | 120万円×20%=24万円 |
3割特例 | 120万円×30%=36万円 |
売上税額が同じなら、この例では12万円増えます。割合で見ると納付額は1.5倍ですが、実際の増減は売上や選ぶ計算方法によって変わります。
税込売上1,320万円に直接30%を掛けると396万円になりますが、それはこの制度の計算ではありませんので間違えないようにしましょう。10%対象の税込売上から税額を取り出すなら、まず、1,320万円 (税込)÷110×10=120万円と計算します。
毎月の資金準備に置き換えると?3割特例で増える負担はどれくらい?
この例での3割特例の納付額36万円を12か月で準備するなら、月3万円が目安です。2割特例の年間24万円に比べると、 月1万円分の準備を増やすイメージになります。
消費税負担の増加を見越して、資金繰りを行うようにしましょう。
関連記事:消費税の仕組みをやさしく解説|個人事業主は何を計算して、いつ納める?
3. 自分も使える?対象者と確認したい条件
3割特例は、小規模な個人事業主なら全員使える制度ではありません。
最初に確認する3つの項目
まず、①個人事業者であること、②インボイス発行事業者として登録していること、③基準期間の課税売上高が1,000万円以下であることを確認します。
通常の個人事業主の基準期間は2年前です。
3割特例を使う年分 | 基準期間として確認する年 |
|---|---|
2027年分 | 2025年 |
2028年分 | 2026年 |
「今年は売上が少ないから使える」と判断しないようにしましょう。[出典:国税庁・3割特例の適用可否フローチャート]
2年前の売上が1,000万円以下でも、追加確認が必要
前年1月〜6月の「特定期間」による判定などで、登録とは関係なく課税事業者になる場合もあります。特定期間は、課税売上高に代えて給与等支払額を使って判定できる取扱いがあります。
そのほか、次のような場合は、適用できない課税期間に当たらないかを確認します。
一定の高額資産の取得により、免税事業者に戻れない期間がある
届出で課税期間を1か月・3か月に短縮している
相続した事業の売上などによって、納税義務の免除が制限される
単に高いPCを買っただけで必ず対象外になるわけではありません。資産の種類・金額、課税事業者になった経緯、取得時の計算方法などによるルールです。相続についても例外があるため、該当する方は個別に確認しましょう。[出典:国税庁・3割特例の適用ができない課税期間]
2026年に2割特例を使えたら、2027年も使える?
自動的には決まりません。判定に使う過去の売上などが年ごとに変わるからです。
たとえば2025年の課税売上高が1,200万円なら、2027年分は基準期間の1,000万円要件を満たしません。2026年分に2割特例を使えていたとしても、2027年分は別の計算方法を検討します。
反対に、3割特例には「前年に2割特例を使ったこと」自体を必須とする条件はありません。登録状況など、その年の要件で判断します。
4. 3割特例を使わない方が有利な場合もある
特例を使えることと、使うと納付額が最も小さくなることは別です。
仕入れや設備投資が多い年
売上税額120万円に対して、原則課税で控除できる仕入税額が108万円なら、納付額は12万円です。3割特例の36万円より24万円小さくなります。
控除できる税額が売上税額を上回る場合は、原則課税で還付となることもあります。3割特例では、設備投資が多いこと自体による仕入超過の還付はありません。
関連記事:原則課税・簡易課税・2割特例の違いは?個人事業主の消費税を同じ売上で比較
簡易課税の割合が高い事業
売上税額120万円の小売業で、簡易課税のみなし仕入率80%を適用できるなら、納付額は24万円です。卸売業で90%なら12万円になります。
一方、第5種事業のみなし仕入率50%なら、納付額は60万円です。この条件では3割特例の36万円の方が小さくなります。
事業区分は、実際の取引内容で確認します。原則課税や簡易課税を利用できる状態か、届出状況も含めて比較しましょう。[出典:国税庁・簡易課税制度の事業区分]
関連記事:原則課税・簡易課税・2割特例の違いは?個人事業主の消費税を同じ売上で比較
5. 手続きと、簡易課税へ移るときの期限
3割特例には事前の届出は不要
3割特例を使うための事前届出は不要です。適用できることを確認し、確定申告書の所定欄に適用する旨を記載します。[出典:国税庁・3割特例の創設]
ただし、消費税の計算が簡単でも、売上の記録や所得税の経費に関する請求書・領収書の保存は必要です。「インボイスの実額集計が不要」と「書類を残さなくてよい」は違いますので間違えないようにしましょう。
特例の翌年は、簡易課税の届出期限が延びる場合がある
簡易課税の届出は、原則として適用する課税期間の開始前に必要です。
一方、2割・3割特例を適用した翌課税期間には、その翌課税期間の申告期限までに届出書を提出して、簡易課税を適用できる移行措置があります。
たとえば2028年分に3割特例を使い、2029年分から簡易課税を使うなら、通常の個人事業主は2030年4月1日までの届出が可能です。3月31日が日曜日のため、この日が2029年分の消費税申告期限になります。
この場合も、基準期間の課税売上高5,000万円以下など、簡易課税の要件を満たす必要があります。[出典:国税庁・特例適用後の簡易課税制度の選択]
6. 2029年以降に向けて準備すること
現行制度で3割特例を使えるのは2027・2028年分です。その後も課税事業者であるなら、原則課税か簡易課税での申告を見据える必要があります。
まず、次の情報を年ごとに更新しておきましょう。
過去の課税売上高と登録状況。 翌年の特例が使えるか判断する材料にする。
売上の内容。 簡易課税の事業区分を確認できるようにする。
経費と設備投資の予定。 原則課税との比較に使う。
提出済みの届出書。 いつから、どの方法を選べるか確認する。
原則課税への移行を検討するなら、仕入先の登録状況や請求書も整理しておくと役立ちます。免税事業者等からの仕入税額控除の割合も段階的に変わるためです。
関連記事:免税事業者からの仕入税額控除はどう変わる?2026年10月から70%・50%・30%へ
まずは2026年分の申告と、2027年分の見込みを分けて試算してみてください。税額の変化を先に把握しておくと、納税資金と届出の準備を進めやすくなります。






