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奥野佑樹 税理士事務所

合同会社の定款、テンプレートのまま使っていませんか?―見落とされがちなポイント整理

    2026.4.8

    はじめに

    昨今、コスト面の優位性や制度上の柔軟性、また、ソロプレナー的な働き方の広がりを背景に、合同会社の設立件数は増加を続けています。2024年の新設合同会社は42,107社にのぼり、新設法人全体の約27%を占めるまでになりました(東京商工リサーチ、2025年6月公表)。

    合同会社は、株式会社に比べて「定款自治」が幅広く認められた法人形態です。株式会社では会社法が詳細に定める機関設計や意思決定手続に従わなければなりませんが、合同会社は、法律の強行規定に反しない限り、定款で自由にルールを設計できます。設立コストも株式会社より約14万円安く、公証人による定款認証も不要です。

    一方で、自由度が高く、コストが低いがゆえに、インターネット上で入手できるテンプレートや、マネーフォワード会社設立やfreee会社設立などのオンライン設立サービスが自動生成する定款をそのまま流用し、自社の実態に合わない定款のまま設立されている合同会社も少なくありません。確かに会社設立サービスには便利な面もありますが、安易に考えすぎると、のちの修正コストが嵩むリスクにつながります。

    実際、弊事務所へご相談される方で「いままで定款をあまり吟味したことがない」という方は、最近増加しているように思われます。

    本稿では、合同会社のテンプレート定款に潜むリスクを、記載事項の分類に沿って体系的に解説します。これから会社設立を検討している方はもちろん、いままで定款について深く考えたことの無い方も、ぜひご覧ください。


    第1章:合同会社の定款の構造―3つの記載事項を理解する

    まずは、合同会社の定款について、基本事項を改めて整理したいと思います。

    定款に記載される事項は、法的な効力の違いに応じて3つに分類されます。

    絶対的記載事項―1つでも欠ければ定款は無効

    会社法第576条第1項に定められた、定款に必ず記載しなければならない事項です。

    合同会社の場合、以下の6項目が該当します。

    ①目的、②商号、③本店の所在地、④社員の氏名又は名称及び住所、⑤社員全員が有限責任社員である旨、⑥社員の出資の目的及びその価額又は評価の基準

    これらが1つでも欠けていれば定款そのものが無効となり、設立登記は受理されません。

    テンプレートは通常この6項目を網羅していますが、それぞれの「中身」を戦略的に設計できているかどうかは別の問題です。特に事業目的の文言設計、商号の商標リスクなどは、空欄を埋めるだけでは適切な判断にたどり着けません。

    相対的記載事項 ― 書かなければ効力が生まれない

    定款に記載しなくてもよいが、そのルールを会社に適用したければ、定款に記載しなければ法的効力を持たない事項です。

    合同会社においては、定款変更の決議要件に関する別段の定め(会社法第637条)、競業の禁止や利益相反取引の承認に関する定め(同第594条・第595条)、利益の配当に関する定め(同第621条)、持分譲渡・退社に関する定め(同第585条・第606条)、社員の死亡時に相続人が持分を承継できる旨の定め(同第608条)などがこれにあたります。

    テンプレート定款で最も深刻な問題が生じるのは、この領域です。合同会社は定款自治の幅が広い反面、定款に規定しなければ会社法のデフォルトルールが適用され、このデフォルトルールがひとり法人や小規模法人の実態に適さないケースが多くあります。

    任意的記載事項 ― 書かなくても効力は否定されないが明文化する意味がある

    定款に記載しなくてもそのルールの効力自体は否定されない事項です。ただし、定款に記載しておくことでルールを明確にし、将来のトラブルを予防する効果があります。事業年度(決算期)の定め(これは税務署への届出等との関係上、実質的にはほぼ絶対的記載事項と同じように実務上は扱われています)、公告の方法、社員総会を設置する場合の手続規定などが該当します。

    テンプレートでは事業年度と公告方法が機械的に記載されているだけのことが多く、特に事業年度の設計は税務戦略に直結するにもかかわらず、十分に検討されていないケースが目立ちます。


    第2章:テンプレートでは対応できない設計ポイント

    ここからが本題です。絶対的記載事項・相対的記載事項・任意的記載事項のそれぞれについて、テンプレートでは対応できない、あるいは見落とされやすい設計ポイントを順に解説します。


    【絶対的記載事項】

    1. 事業目的―許認可の文言と将来の拡張性

    事業目的は会社の活動領域を法的に画定する項目です。テンプレートには「コンサルティング業」「情報処理サービス業」といった汎用的な選択肢が用意されていることが多いですが、ここで注意すべき点が2つあります。

    1つ目は、許認可に必要な文言です。

    許認可が必要な事業を行う場合、各法令が定める要件に従って、事業目的の記載を正確に行う必要があります。たとえば有料職業紹介事業の場合、「有料職業紹介事業」と正確に記載する必要があり、「人材派遣業・人材紹介業」という記載では許認可の際に労働局等に定款目的の変更を求められる可能性があります。定款変更には法務局への登録免許税だけで3万円がかかりますので、設立時に適切に設計することで将来のコストを回避しましょう。

    2つ目は、将来の拡張性です。

    設立当初はITコンサルティングだけを行う予定であっても、セミナー事業やコンテンツ販売、人材紹介などに進出する可能性があるならば、あらかじめ目的に含めておくべきです。ただし、無関係な事業を大量に並べると、金融機関の融資審査で「事業の一貫性が見えない」と評価されるリスクがあるため、現在の主業と合理的に関連する目的を過不足なく設計する必要があります。

    目的条項の最後に「前各号に附帯又は関連する一切の事業」と書いておくのも一つのリスク回避策です。

    2. 商号―商標権と英文表記

    商号は法的には同一住所に同一商号の会社がなければ自由に選べますが、見落とされやすいリスクが2つあります。

    1つ目は商標権への抵触です。

    他社がすでに同一または類似の名称で商標登録をしている場合、商号として登記できたとしても、商標権侵害として使用差止めや損害賠償を請求されるリスクが存在します。設立前に特許庁の商標検索サービス(J-PlatPat)などで確認しておくことをおすすめします。

    2つ目は英文表記の定めです。

    合同会社の英語名称としてはLLC(Limited Liability Company)やGK(Godo Kaisha)がよく用いられます。英文表記は登記事項ではないため、商業登記簿への記載は必要ありませんが、海外との取引やグローバルなウェブサイト運営を予定している場合は、定款の商号条項に「英文では○○ LLCと表示する」といった併記をしておくと、対外的な名称の根拠を明確にできます。テンプレートではこの英文表記条項が用意されていないものがほとんどですので必要であれば追加しましょう。

    (商号)

    第X条 当会社は、合同会社○○と称し、英文では、○○ LLC.と表示する。

    3. 本店所在地 ― 最小行政区画にとどめる

    定款における本店所在地は、最小行政区画(「東京都豊島区」など)までの記載で足ります。番地まで記載しても法律上問題はありませんが、同一の区内で事務所を移転した場合にも定款変更が必要になってしまいます。登記申請時には番地を含む具体的な住所を届け出ますので、定款上は最小行政区画にとどめておくのが実務上の定石です。テンプレートによっては番地まで記載する書式になっているものがありますので、注意してください。


    【相対的記載事項】

    4. 決議要件の別段の定め―膠着リスクを回避する

    合同会社の重要な意思決定は、社員間の同意や承認によって行われます。会社法のデフォルトでは、多くの重要事項について「総社員の同意」や「過半数の承認」が求められます。定款の変更(会社法第637条)はその最たる例であり、そのほか利益相反取引の承認(同第595条)、持分の譲渡の承認(同第585条)なども、要件が厳しいため、適切な検討が必要です。

    ひとり法人であれば社員は自分一人ですから大きな問題もありませんが、2人以上の社員で設立する場合や、将来新たな社員を迎え入れる予定がある場合、意思決定の要件を検討しないことは重大なリスクに直結します。社員間で意見が対立すれば、重要事項を決定できない膠着状態に陥りかねません。

    会社法は「定款に別段の定め」を置いて決議要件を緩和(もしくは強化)することを認めているため、適切な要件設計を検討しましょう。

    緩和の方法は、同意の水準を引き下げる(たとえば「社員の3分の2以上の同意」や「社員の過半数の同意」、「特定の社員による同意」とする)というベーシックな方法から、社員総会を設置してその決議事項とすることも可能であり、これらは決議項目ごとに自由に組み合わせて活用することもできます。(Aについては同意(承認)でBについては社員総会決議など)

    話が少し専門的になりましたが、では、具体的にどの項目について検討すべきなのでしょうか。以下に、検討の優先度が高いと思われる項目と、設計にあたって考慮すべきポイントを整理しました。

    ①定款変更(637条)

    会社の根幹に関わる事項であるため、安易に過半数まで引き下げるとガバナンス上のリスクが生じます。一方で全員一致のまま放置すれば、社員が増えた段階で膠着状態の温床になります。3分の2以上を落としどころとする例が多いですが、社員の人数構成やパワーバランスを踏まえて判断すべきです。また、社員総会を設け、頭数基準ではなく出資額比率に基づいた決議要件とする場合も考えられます。

    ②役員報酬の決定方法

    毎期の報酬額をどのような手続で決定するかという論点です。報酬は社員間の利害が直接衝突しやすい項目であり、決定手続と根拠を定款で明確にしておくことが、税務上の観点からも重要です。詳細は後述の「役員報酬の決定方法の定めの必要性」で解説します。

    ③競業の禁止(594条)及び利益相反取引の制限(595条)

    競業の禁止および利益相反行為の制限は、業務執行社員が会社に対して不利益を生じさせる恐れのある取引を行うことを規律するものです。

    競業行為については他の社員の全員の承諾、利益相反取引については当該取引を行う社員以外の社員の過半数の承認が必要とされていますが、必要に応じて、定款での緩和が可能です。

    「代表社員の承認を受けなければならない」「特定の社員の承認を受けなければならない」等とすることが考えられます。

    ④利益の配当(621条)

    配当の可否・金額・時期をどのように決定するかという論点です。

    株式会社と異なり、合同会社の社員は、定款に別段の定めがない場合、原則として「いつでも」利益の配当を請求することが出来ます。

    したがって、複数社員がいる場合、配当に関する決定権限と手続を定款で定めておかないと、配当請求をめぐるトラブルの原因になります。

    (利益の配当)

    第X条 利益の配当をしようとするときは、毎事業年度末日現在における社員に配当するものとし、業務執行社員の過半数の同意をもって次の事項を決定する。

    一 配当財産の種類及び帳簿価額の総額

    二 社員に対する配当財産の割当てに関する事項

    三 当該利益の配当がその効力を生ずる日

    2 社員は前項の決定後でなければ、利益の配当を請求することができない。

    ⑤任意退社(606条)と持分の譲渡(585条)

    社員が会社を離れる際のルールです。会社法のデフォルトでは、退社予告は6か月前、持分譲渡には他の社員の全員の承諾が必要ですが、いずれも定款で変更できます。

    また、あわせて重要なのが、退社した社員に対する持分払戻額の算定方法(簿価純資産を基準とするのか時価評価をし直すのか)と払戻しの時期・方法(一括か分割か)です。この取り決めがなければ、退社する社員からの請求によって、キャッシュ・フローが一気に悪化するリスクがあります。また換金性の低い不動産等に資産が偏っている場合、これらを売却せざるを得ない状況となり、事業の継続に支障をきたすことも想定されます。

    ⑥組織変更(781条)

    合同会社から株式会社への移行を将来的に視野に入れている場合に検討すべき項目です。組織変更には会社法上「総社員の同意」が必要とされていますが、この要件を定款であらかじめ緩和しておけば、将来の意思決定がスムーズになります。

    以上から分かるとおり、会社の実態に応じて、必要な決議要件の緩和(強化)を行い、後のリスクを回避するような定款を設計することが重要です。

    5. 一般承継の定め―ひとり社長が死亡したら会社が消える

    ひとり合同会社にとって最も致命的なリスクがこの論点です。

    会社法第607条第1項第3号は、社員の死亡を「法定退社事由」と定めています。社員が亡くなれば、その社員は当然に退社したものとして扱われます。そして、合同会社は「社員が欠けたこと」を解散事由としています(会社法第641条第4号)。

    つまり、ひとり合同会社の唯一の社員が死亡すれば、社員がゼロになり、会社は法律上当然に解散します。

    では、相続人が会社を引き継ぐことはできないのでしょうか。これは、定款に定めがない場合は原則としてできません。

    ただし、会社法第608条第1項は、定款で「社員が死亡した場合に、その相続人が当該社員の持分を承継する」旨を定めることを認めています。

    逆に言えば、この一文が定款に書かれていなければ、どれほど事業が順調であっても、経営者の突然の死によって会社は即座に解散に向かいます。

    最近のテンプレート定款には、この承継条項を含んでいるものも多くなってきましたが、念のため確認されることをおすすめいたします。


    【任意的記載事項】

    6. 役員報酬の決定方法―法律上は原則「無報酬」

    見落とされがちですが、合同会社の業務執行社員と会社の関係は法律上「委任関係」にあり、会社法第593条第4項が民法第648条(受任者の報酬)を準用しています。

    民法第648条の原則は「報酬を支払う旨の特約がなければ無報酬」です。

    つまり、合同会社の業務執行社員は、定款その他で報酬に関する定めがなければ、法律上は会社に対して報酬を請求する権利がないということになります。

    もちろん、実務上ほとんどの合同会社は業務執行社員に対して報酬を支払っています。しかし、その支払の法的根拠が定款に存在しないとすれば、税務調査において「報酬を支払う旨の定めがどこにあるのか」を問われた際に、根拠を示せないリスクがあります。

    定款に「業務執行社員の報酬、賞与その他の職務執行の対価として当会社から受ける財産上の利益は、社員の過半数の同意によって定める」旨を明記し、毎期の報酬額を同意書または議事録に残しておくことが、法務上も税務上も望ましい対応です。この規定は、次に述べる社員総会の設置、および事前確定届出給与の制度とも関連します。

    7. 社員総会の定め―任意の機関だが、設置する実益がある場面

    株式会社には株主総会という法定の意思決定機関がありますが、合同会社にはこれに相当する法定の機関がありません。合同会社は個々の社員の同意や承諾によって意思決定を行うのがデフォルトです。

    しかし、定款で任意に「社員総会」を機関として設置することは認められています。社員総会を設置するかどうかは完全に自由であり、設置した場合でも、どの事項を社員総会の決議に委ね、どの事項を合議制(社員の同意)のまま残すかも自由に設計できます。招集手続や決議方法についても定款で自由に定めることが可能です。

    では、社員総会を設置する実益はどこにあるのでしょうか。

    まず、ガバナンスの可視化という観点があります。社員総会を設置し、招集通知の発出、議案の上程、決議、議事録の作成という一連の手続を定めておくことで、会社の意思決定プロセスが文書として残ります。将来的に外部の投資家や金融機関から内部統制を問われた際にも、説明可能な体制を整えることにつながります。

    次に、税務上も関連論点が存在します。事前確定届出給与に関するものです。

    業務執行社員に対して毎月の定額報酬とは別に賞与(ボーナス)を支給し、それを法人の損金(経費)に算入したい場合、法人税法上の「事前確定届出給与」として届け出る必要があります。

    この事前確定届出給与に関して、2025年2月に東京国税局が文書での回答を行っており、ここでは、合同会社が事前確定届出給与を利用するための前提として、定款に定時社員総会の規定が設けられていることが求められる旨が示されました。つまり、事前確定届出給与を活用したい合同会社にとっては、社員総会の設置は事実上の必須要件となるものと考えられます。(社員総会の定めがないことによって、事前確定届出給与を否認された事例は私の知る限りまだ存在しませんが、文書回答が存在するため、できる限りの対応はしておくべきでしょう)

    なお、事前確定届出給与に関する定款の具体的な条文設計や届出手続のスケジュールについては、重要な論点が多岐にわたるため、別の記事「合同会社における事前確定届出給与の支給について」で開設しております。

    8. 任期の定め―法律上の義務はないが、事前確定届出給与と関連して

    株式会社の取締役には法律で任期が定められていますが(原則2年、非公開会社は最長10年まで伸長可能)、合同会社の業務執行社員には法律上の任期がなく、登記事項でもありません。

    しかし、定款で業務執行社員の任期を定めることは可能です(平成20年11月21日民商3037号法務省民事局商事課長通知)。そして、前述の事前確定届出給与の制度を利用するためには、この任期の定めが事実上必須となると考えられます。

    事前確定届出給与の届出期限は「株主総会等の決議日から1か月以内(または事業年度開始日から4か月以内のいずれか早い日)」と定められていますが、その起算となる「職務の執行を開始する日」を明確にするために、定款で任期を定め、定時社員総会で再任する仕組みを設けておく必要があります。東京国税局の文書回答事例でも、業務執行社員の任期を10年と定め、定時社員総会の開催日を職務執行期間の開始日とする定款の設計が前提とされています。

    テンプレート定款には任期に関する規定が一切ありません。社員総会の設置、役員報酬の決定方法、そして任期の定めは、いわば三位一体の関係にあり、事前確定届出給与を活用するための基盤となります。

    9. 決算月の設計―消費税免税・特定期間・タックスプランニング

    テンプレートの事業年度欄には、設立の1年後が決算月の初期値として入っていることが多く、深く検討せずにそのまま使われがちです。しかし、事業年度の設計は、以下の3つの観点から戦略的に行うべきものです。

    ①消費税の免税期間の最大化と特定期間

    資本金1,000万円未満の新設法人は、原則として設立後最大2事業年度にわたって消費税の免税事業者となりますが、第2期の免税判定には「特定期間」という概念が関わります。特定期間とは、前事業年度開始日以後6か月の期間をいい、この期間の課税売上高(または給与等支払額)が1,000万円を超えると、第2期から課税事業者となります。

    ここで重要なのは、前事業年度が7か月以下である場合、その事業年度は特定期間の判定対象から外れるという点です(消費税法第9条の2第4項第3号)。つまり、設立第1期を7か月以下に設計しておけば、第1期の課税売上高や給与支払額がどれだけ大きくても、特定期間による第2期の課税判定が行われません。結果として、第1期・第2期の合計で最大19か月間、消費税の免税メリットを享受できる可能性があります。

    たとえば、8月1日に設立して決算月を翌年2月にすれば第1期は7か月となり、特定期間の判定を回避できます。一方、8月1日に設立して翌年7月を決算月にすると第1期は12か月となりますが、この場合、第1期前半6か月の売上高や給与支払額が1,000万円を超えると第2期から課税事業者になるリスクがあります。自社の売上規模や人件費水準に応じて、第1期を7か月以下にすべきかどうかを判断することが重要です。

    ②業績の季節変動を活かしたタックスプランニング

    業績に季節変動がある場合、売上のピークが事業年度の期首付近に来るように決算月を設定することが有利に働く場合があります。期首に売上のピークが来れば、その時点で年間の利益がある程度見通せるため、残りの期間を使って役員報酬の改定、設備投資、各種の節税策、納税資金の確保を計画的に実行する余地が生まれます。逆に、売上のピークが期末直前に来る設計にしてしまうと、利益が確定した後に対策を講じる時間がなく、予想外の納税負担を招きやすくなります。

    繁忙期との関係も実務上軽視できません。決算月は決算作業と税務申告の集中する時期ですから、事業の繁忙期と重ならない月を選ぶのが望ましいといえます。

    事業年度は設立後でも定款変更によって変更できますが、手続の手間と税務上の影響を考えると、設立時に正しく設計しておくに越したことはありません。テンプレートの初期値を安易にそのまま使うことは避けましょう。


    第3章:セルフチェックリスト

    ここまでの内容を踏まえ、テンプレート定款の自己診断チェックリストを作成しましたので必要に応じご活用ください。

    【絶対的記載事項に関するチェック】

    • 事業目的に、将来行う可能性のある事業や、許認可に必要な法定文言が含まれているか

    • 商号について、商標検索(J-PlatPat)で他社の商標との抵触がないか確認したか。海外取引がある場合、英文表記の併記があるか

    • 本店所在地は最小行政区画(市区町村)までの記載にとどめているか

    【相対的記載事項に関するチェック】

    • 定款変更や持分譲渡など、主要な意思決定事項の決議要件について、緩和する別段の定めの必要性を検討したか(とりわけ社員が2名以上の場合)

    • 社員が死亡した場合に相続人が持分を承継できる旨の規定があるか

    • 退社時の持分払戻しに関するルール(予告期間、評価方法、払戻方法)が定められているか

    【任意的記載事項に関するチェック】

    • 業務執行社員の報酬の決定方法とその根拠が定款に明記されているか

    • 社員総会が機関として設置されているか(事前確定届出給与の活用を予定している場合)

    • 業務執行社員の任期が定められているか(事前確定届出給与の活用を予定している場合)

    • 事業年度(決算月)は、消費税の特定期間・免税期間の最大化を考慮して設計したか

    • 業績の季節変動がある場合、売上ピークが期首付近に来る設計になっているか

    これらのうち3つ以上に「いいえ」がある場合は、定款の見直しを検討すべき余地があるといえるでしょう。


    おわりに

    合同会社設立のハードルが低いことはメリットも大きい一方、同時に、適切な検討がないまま設立されていることも少なくありません。

    定款は設立後でも変更できます。しかし、問題が顕在化してから慌てて変更するのと、設立時に適切に設計しておくのとでは、コストもリスクも大きく異なります。

    この記事をきっかけに、定款の重要性をもう一度見直し、必要に応じて登記の専門家である司法書士や、税務の専門家である税理士へのご相談をおすすめいたします。

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